「なんで中瀬が怒ってるんだ」

「さあね、気に入らないんだろう」
秋元は煙草を銜え、マッチで火をつけた。
暗闇に端正な横顔が浮かび上がる。

「壁が薄いのは問題だな」
「葛西のときは気を使ってホテルを使ったんでしょう?待遇に差があるね」
秋元が皮肉った。
「ホテルがいいのか?」
「そりゃあね。でもいいよ、無理しなくて。どうせ、葛西の時に無理して散財して、今月は厳しいんでしょう?」
見抜かれている。

「まあな。今月は厳しいが、来月なら・・・」
「俺は部屋でいいよ。外行くのなんか面倒だし、それに」
秋元は煙を吐き出して、
「場所には拘らない主義なんだ」

「なあ」
俺は前から思っていた疑問をぶつけてみた。
「お前は、どうして俺と寝るんだ?」
「好きだから」
秋元はにやりとして、
「そういわせたいの?欲深いな」
「なんだと」
「深い意味なんてないよ。最近退屈してて。それだけ」

「過酷な訓練で退屈している暇なんかないと思うが」
「あの程度じゃね。身体もあったまらないよ」
秋元は嘯き、
「セックスのほうがずっといい。運動にもなるしね」
と言った。
「身も蓋もないことを言うな。真面目に聞いているんだ」
「俺も真面目に答えてるよ。自分はどう?」
秋元はまた、流し目をくれた。

「俺と寝るのはどうして?聞かれたら困るだろう?」









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