「ひとりで寝られないんだろう?薄い壁を伝って、君が寝返りを打つ音が一晩中聞こえてくる・・・俺だって、なにも感じてないわけじゃないんだ・・・」

「お前も眠れないのか・・・?」
「壁の向こうに君がいると思うとね・・・待っていても君は来ないし」
「行くわけないだろう。中瀬もいるのに」
「中瀬がいなかったら、君は来てくれた?そうは思えないな」

秋元は腕を伸ばして、俺の頭を抱きしめた。
俺はベッドに腰を下ろしたまま、秋元に抱かれていた。

「仕方ないから俺が来たよ。君の寝返りを止められるのは俺しかいないみたいだしね・・・」
「秋元」
「黙って。目を閉じて。気持ちよくしてあげる」

「・・・キスはしないんじゃなかったのか」
「あの時は一晩限りのつもりだったからね。気が変わったんだ」

秋元はキスがうまい。葛西とは違う・・・。
俺の頬を挟み、深くキスを繰り返す。すばしこい舌の動きが、脳幹を刺激する。

「君の場合は、順序を踏まないといけないんだね。でないと、警戒心が解けない。よくわかったよ」
秋元は耳元で囁いて、それからキスを鎖骨に落とした。

「秋元」
「なに?」
「俺は、責められるのは苦手だ。交代しろ」
俺は膝の上に乗っていた秋元を、組み伏せて、身体の下に押さえ込んだ。

「わがままだな。でも、いいよ、好きにすれば」
秋元は押し倒されたまま、俺のキスを受けた。

「覚悟しろよ」
乱暴にされたいなら、いくらでも乱暴にしてやる。
俺は秋元のシャツを、思い切り引き剥がした。

白い、秋元の肢体が、目にまぶしかった。
俺を見上げたその顔が、一瞬葛西と重なって見えた。






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