秋元と寝てから一週間が過ぎた。

秋元は、なんというか、全く普段と変わらない。
まるで俺とのことなど、何事もなかったみたいだ。

それを責める資格がないのはわかっているが、俺のなかで、微妙な感情が燻り続けている。
少なくとも、俺のほうは秋元に対する見方が変わってしまった。
意識してしまう。

俺は後悔していた。
葛西を愛している。なのに、俺は誘惑に負けて秋元を抱いてしまった。
秋元を抱いてもいまひとつ満たされなかったのは、やはり、それが葛西ではなかったからだろう。

だが、それは超えてはいけない一線だったのだ。


「後悔してるんだね。顔に書いてあるよ」
秋元が囁いた。
「貴様はどうなんだ」
「俺?俺は別に・・・平気だけど」
見事なまでのポーカーフェイス。そういうところは、まるで田崎先輩だ。
秋元は田崎先輩とは親しくて、よく手品を教えてもらっている。
雰囲気も似ているかもしれない・・・。

「よく平気だな」
つい、責める口調になる。
「平気なのが不満?無視して欲しかった?」
秋元が冗談口調で、そう言って、切れ長の目で流し目をした。
無視して欲しいわけではないが、あまりにも変わらない秋元に、俺は物足りない気持ちにさせられる。

「正直、あんまりうまくいかなかっただろう?きっと君は後悔してるんだと思って、俺も多少は落ち込んでいたよ。そうは見えないかもしれないけど」
落ち込んでいたのか?
そうは見えない。
うまいこといって、俺を慰めているのだろう。

「そろそろもう一回したくならない?俺のほうは準備オーケーだよ。次は旨くできると思う」
秋元は言った。







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