夢を見た・・・。何の夢だったのか、わからない。
感覚だけが残っているような、そんな夢だ。それなのに、妙に記憶に刻まれていた。
三好はベッドから起き上がると、ぼんやりと辺りを見回した。
何もいつもと変わらない、平穏な朝だ。
だが、そのことに三好は疑問を持った。
昨日までの不安定な気持ちはどこへ行ったんだ?
先日、三好は自分でも整理のつかない感情に襲われて、佐久間の部屋を訪れた。
彼を哀れに思ったのか、なんなのか、いつの間にか自分の昔語りをしていた。
・・・らしくはない。そのせいで、この数日間イライラし通しだった。
自分が何を求めているのかわからなかった。それなのに・・・
三好は体が軽くなっているような気がした。
今なら、なんでもできる。そんな自信がわいてくるようだった。
自分がどうしようもなく愛しい。
こんな感情は初めてだ。
三好はもう一度ベッドに横たわり、赤ん坊のように体を丸めた。
一瞬、どこかで嗅いだことのある香りがした。
一晩中、この香りに包まれていたような気がする。
三好はユックリと呼吸をして、この香りの記憶を手繰り寄せた。
とても落ち着く香り・・・。
目を閉じた三好の頭の片隅で、低く優しい声が囁いた。
愛している・・・。
何度も、何度も・・・。