「結城さんが子供なんて、調子狂うな」
波多野が言った。
「誰も違和感を感じてないのが凄い」
と実井。
「こないだの幼女に比べればずっと受け入れやすいからな」
と小田切。
「神永はどうした?」
と甘利。
「さあ。どっかで泣いてるんじゃないのか」
と小田切。
「片思いだったのか」
と甘利。
「それはどうだろうな・・・」
と小田切が微妙な返事をした。

有崎晃は結城の部屋で執務を取っていた。
「お呼びでしょうか?」
三好がドアをノックした。
「ああ。入れ」

小さな有崎晃は、顔だけ机から上に出しているような状態だが、それを苦にする風でもなく、
「今度の出張だが、貴様を連れて行く。準備しておけ」
「え?神永の筈じゃなかったですか」
「神永は都合が悪い。それだけだ」

有崎晃は、丁寧に撫で付けて固めた前髪をしていた。
どこぞのお坊ちゃんの七五三といったところだ。
眼光は鋭く、瞳には生気がある。
三好はそれを眩しく眺めた。
結城さんの目は光のない暗い目だ。
彼はいつごろからそんな目をするようになったのだろうか。

「俺が珍しいか」
皮肉げに、有崎晃が尋ねた。
「・・・本当に結城さんなんですか?」
「しゃがめ」
言われたとおりにしゃがむと、有崎晃は歩み寄ってきた。
「証拠は、これだ」
有崎晃は、三好の唇に、自分の唇を強引に重ねた。






inserted by FC2 system