今が何時なのか、あれからどれくらい経ったのか、ここがどこなのか、そんなこともうどうでもよくなった。

夢か現実か、幻か願望か、この身体を駆け抜ける衝動が苦痛か快楽かさえも、どうだって良かった。
ただただ繋がりたい。
俺は必死で腕を伸ばして、掠れる声を押し出すように名前を呼んで、求めた。
この声が、気持ちが、結城さんに伝わってほしい。
ただそれだけを考えて。

「貴様は気づいているのだろう?」
「あ・・・。な、・・・に?・・・」
朦朧とした意識の中で、結城さんの問いにかろうじて答えた。
「ずっと貴様を見ている奴のことをだ」
そういって結城さんは俺の顔に手を添えると、部屋の片隅を見るように促した。
その暗闇にぼんやりと浮かび上がったのは、夢の中で見た辻だ。
いや、昨夜見たときはもっとあどけない少年だった。しかし・・・
「え・・・、つ・・・じ?」
俺の声を聞いてビクッと身体を震わせた。
二つの黒い瞳が薄明かりの中でかすかに光って見えた。
泣いてる?
悲しげに、それでもまっすぐにこちらへ視線を向ける彼の瞳を見ていると、次第にその姿が記憶の中の佐久間へと変わっていった。
「ど・・・して?」
わけがわからない。

なぜ泣いているのか、なぜ辻がいるのか、なぜ人の姿なのか、なぜ佐久間さんに変わったのか、やはりここは夢の中なのか、それなら身体に感じるこの体温はなんなのか・・・
俺は結城さんに聞きたくて後ろへ向き直ろうとした。
けれど・・・
「あぁっ!あ!あ!」
その前に再開された激しい動きにその思いはたちまち霧散した。

一瞬、結城さんが切なそうに眉根を寄せたように思ったが、それも、夢なのかもしれない。









inserted by FC2 system