「真島」
山肌を滑るように降りてきて、真島は目の前に立った。
目が、ぎらついている。

「ふ、ふざけてただけだよ」
「お前は黙ってろ、波多野」
「でも、本当だよ!真島」
真島は僕達の側まで来ると、僕の手をひいた。

「幼稚園からの幼馴染だとキスまでするのか?」
「真島」
「そうですよ。俺とみのるは、一緒に風呂も入った仲なんですから」
司が言った。
「そ、そんなの幼稚園の話だろ!」
「小学校3年まで入ってたよ」
「そ、そうかもしれないけど」
「本当なのか」
真島が僕を睨みつける。
怒ると、妙にセクシーで、僕はちょっと眩しかった。
「なにぼうっと呆けてるんだ?アホかお前」
「だって・・・真島がかっこいいから・・・」
僕が言うと、司が噴出した。
「ごめん。なんでもない・・・あんたら、いいコンビだよ」
司はくるりと背中を向けて、沢を下って行った。

夜。結局僕と真島でカレーを作った。
「昼と被ったな」
真島はそういいながら、カレーをよそった。
「ほらよ」
司に手渡す。司は黙って受け取った。
あの時沢を下っていった司は、ちょうどご飯の炊けた頃に戻ってきた。
「おいしそう」
僕が言うと、
「だろ?俺の特性スパイスが入れてあるからな」
真島が得意げに胸を張った。
「変なクスリとかじゃないだろうな」
ぼそりと司が言った。
「なんだと?」
「なんでもないですよ。頂きます」
司はカレーを食べ始めた。

真島のテントは古くて、年季が入っていた。
真島はリサイクルショップで、安くそれを仕入れたらしい。
破れたところから、星空が見えた。
「すげー星・・・」
テントを出ると、すっかり暗くなっていて、満天の星空が広がっていた。

なんだろう。泣けてくる。
3人で星空を見上げながら、僕は胸が一杯になった。










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