「ごめん。結局、カレーになっちゃって」
僕が謝ると、
「別に蕎麦が喰いたかったわけじゃない」
と真島が答えた。
「俺もカレーのほうが好きだな。ココナッツ味でおいしいよ」
と司が言った。

真島と僕が並んで座り、反対側に司が座っている。
司と僕が向き合って座っているのだ。
インドカレーの店で、内装もインド風で凝っている。マサラの香りが漂っている。
真島と僕はチキンカレー、司はココナッツカレーだ。
ナンとライスが選べて、みんなナンにした。お替り自由。
小さなチャイが食後につく。

長野に入ったところで、ちょうど看板を見つけて、そのまま誘導されて、その店に入った。ほぼ満席で、開いていたのは運が良かった。
「運転疲れたでしょう?俺、代わりましょうか?」
司が言った。
「いや、いい。事故ると保険が利かないしな」
真島はそう答えた。
「縁起でもないけど、確かにそうですね。普段あんまり運転しないし」
と司が言った。
車はジープ型のレンタカーだ。見晴らしはいいけど、大きいので目立つ。

「おふたりはどういう関係なんですか」
司の言葉に、思わず水を噴出しかけた。
「大丈夫か?」
真島が背中をさすってくれて、なんとか飲み込んだ。
「そんなに変な質問だった?大学の先輩後輩?サークルかなんかの」
ああ、そういう意味か。
「いや・・・俺はサークルとかはやらないから」
真島が言った。
「たまたま、真島が絵の具を落として、それを拾ったのが僕で・・・それからの付き合い」
「え?なにその少女漫画的なシチュエーション」
司が変な顔をした。
でも、事実だから仕方がない。
「まあでも、羨ましいよ。社会人になると、簡単に友達とかできないから。同僚とかはライバルでもあるし・・・」
「司は偉いよね。将来的には実家の看板やさんを継ぐんでしょう?」
僕が言うと、

「偉くないよ。親に反発して、大学行けって言われたのに就職して。自分の力でやってみせてやると思ったけど、上司とは合わないし、後悔してる」
珍しく愚痴っぽい司の言葉に、僕は意外な気がした。











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