「待てよっ・・・宗像っ・・・」
「待てない」

宗像に押さえ込まれて、葛西は目を吊り上げた。
「ここ病室だぞ!何考えてるんだっ」
「お前のことだけだ」
葛西は片腕を骨折しているので、もう片方を押さえられるとほとんど身動きが取れなくなった。
「僕も貴様も怪我人だっ!・・・離せっ・・・」
「嫌だ」
「んっ・・・」
唇を塞がれて、葛西は身体をしならせた。無意識だが、誘うような仕草だ。
それに気づいて、宗像はわずかに苛立ちを覚える。
男に慣れたからだは、宗像によってできたものではない。
そこに新見の存在を感じさせる。

新見はひと月以上も葛西を監禁し、陵辱したのだ。知らぬ間に洗脳されて、葛西自身が、セックスの道具と成り果てていても不思議ではない。
葛西の身体から立ち上るむせ返るような色気は、そのせいなのだ。
そう思うと堪らない。
全てを壊したくなる。

「誘うなよ」
耳元で囁く。
「そうやって誘っていたのか?新見のことも」
葛西は目を見張った。
宗像の言葉が、信じられないのだ。
状況は宗像にだってわかっているはずだ。なのに。自分から誘ったというのか?
「なにを言ってるんだ・・・宗像」
「お前から新見の匂いがする」

宗像は強く葛西を掻き抱いた。
「痛い」
葛西が悲鳴を上げる。
それでも構わず、宗像は葛西を抱きしめていた。強く。
宗像自身、身体のあちこちが痛み、傷口が開いた。
だが、何も感じなかった。
新見への嫉妬で、胸が潰れそうだった。
新見は、大切な葛西を、何度も何度も辱めたのだ。
宗像がたった一度しか抱いていない、その細い身体を。

「宗像・・・泣いているのか?」
驚いたような葛西の声で、宗像は自分が泣いていることに気づいた。









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