どれくらいの時間がたったのか、わからない。

そして、ここがどこなのかも。

僕は手錠でベッドに繋がれていた。

腹部には包帯が巻かれている。

新見は、僕をあの現場から連れ出し、咄嗟に僕を抱きかかえて列車を飛び降りたらしい。
どうやってそんなことができたのか、僕は気絶していたからわからないが、彼には超人的な力でもあるのだろうか。

そうして僕はいままで幽閉されている。
コンクリートがむき出しの、廃屋のような建物だ。人の気配はまるでない。
がらんどうの部屋に、古いスプリングベッドが一台置いてある。それだけだ。
天井に明り取りの窓があり、そこからわずかに差し込む光だけが、部屋をわずかに明るくした。夜は全くの闇だ。
新見は時折ふらりと戻ってきては僕に乱暴をした。
そうして性欲を満たすと、またふらりとどこかへ消えた。

たまに正気の時、田中になって現れると、食べ物を持ってきてくれ、僕の手当てをした。
だが、手錠を外すことはなかった。

「いつまで・・・拘束するつもりなんです?」
僕が尋ねると、
「貴方は死んだことになっていますからね。もう、D機関も探してはいませんよ」
田中は答える。
「そんなはずは・・・」
「新見が連れ出さなければ、貴方はあそこで死んでいましたよ。ほら」
田中はわき腹を見せた。鋭い傷跡。

「新見が貴方を庇って負傷した痕ですよ。少しは彼のこと、恩に着てもいいんじゃないでしょうか?あなたを見限ったD機関と違って、新見は貴方のこと、本気ですよ」
「新見は僕とは話もしませんよ」
「自分の感情に戸惑っているからですよ。彼は生まれたての赤子のようなものですからね」
田中はグラスに水を注ぐと、そばに置いた。

「新見が僕を抱いている間も意識はあるんでしょう?」
「ありますよ。僕が愉しんでるか知りたいんですか?ええ、愉しんでますよ」
「・・・・・・」
「でもあんまりそういうこというと、新見が妬いて手がつけられなくなるんでね。・・・まあ、慣れる事ですよ。貴方が新見を受け入れれば、凌ぎやすくなるでしょうから」
田中の言葉に、頬が熱くなった。

確かに、このところ身体が行為に慣れてきたらしい。
ひそかに新見の訪れを期待する自分の身体に、僕は翻弄されていた。
快楽を貪ろうとしている。まるで、それしかないみたいに。
手錠でつながれた僕は、まるで動物のようだ・・・。
苦痛から始まる快楽のこと意外、何も考えられなくなる。
生きる意味さえも見失って。








inserted by FC2 system