暗闇に赤い火が灯った。
三好が煙草を吸ったのだ。

「・・・あんた、俺に同情したのか?」
「同情なんかするもんか。怪我したくなかっただけだよ」
そのまま煙草をふかしている。
浮かび上がる横顔は美しい。ちょっと、高級娼婦のようだ。
「俺にもくれ」
煙草の箱を投げて寄越す。
ごそごそと一本取り出し、口に銜える。
マッチを摺った。

「どうするんだ。これから」
三好は、慣れているのか、俺に襲われたことなどまるでなかったみたいに、そう尋ねた。
「俺なりに調べてみるつもりだ。俺にはまだ・・・葛西が死んだとは思えないんだ」
「新聞社に知り合いがいる。生存者のリストもあるはずだ」
三好が言った。
「・・・なぜ、協力する」
「葛西が死んだのかどうか、僕だって少しは興味がある。それに」
三好は、煙を吐いた。

「結城さんの濡れ衣も晴らしたい」

濡れ衣、か。証拠は限りなく黒だ。結城さんは葛西を見殺しにした。

「俺に協力するなんて、意外だ。あんたを傷つけたのに」
「傷つけた?いつ?」
「・・・・・・」
「お前は優しかったよ」
三好はにやりとした。

俺は唇を噛んだ。三好は、俺をガキ扱いするつもりなんだ。
そうして俺をあしらうことで、自分のプライドを保つのだろう。

煙草を灰皿にこすり付けると、俺はベッドから這い出し、服を着た。
三好は煙草を銜えたまま、

「引き出しに名刺が入っている。ベルリン新聞のリカルド・ダグラスだ。いい報告を待ってる」
タフなものだ。
俺は改めて一期生のタフさに舌を巻いた。







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