「結城さんがわざと葛西をあの列車に乗せて僕の代わりにした?そんな馬鹿なことがあるはずないだろう」

俺の意見を、三好は否定した。
「だが、事故が起こることを結城さんは知っていたと、貴方が言ったんだ」
「それはそうだが・・・結城さんが葛西をわざと死なせるなんて、ありえない」
「ありえないと言い切れますか?」
俺はぎろりと三好を睨んだ。
三好は立ったまま腕組をして俺を睨み返した。

「葛西は貴方に似ていた。本人もそれを意識して、ますますそっくりになっていった。ただ、結城さんに気に入られたいがためにね。葛西はとうとう貴方になった」
「結城さんは葛西に眼をかけていた。殺すはずがない」
「葛西は貴方に似ているから採用されたんだ。貴方に似ているから目をかけられた。それは最初から身代わりとして使うという意味だったとしたら?」
「被害妄想だ」

俺はテーブルの上のグラスを払いのけた。グラスは床に落ち、転がった。
三好は腕を組んだまま睨んでいる。
俺は立ち上がり、三好のほうに歩いた。
「被害妄想なんかじゃない。結城さんが大事なのは、あんただけだ」
俺は三好を壁際に追い詰め、両手をついた。

「結城さんが大事なのは、あんただけなんだ・・・!」

俺は唇の端で笑うと、三好の唇に唇を重ねた。

「何をする気だ」
三好は尋ねた。囁くような、小さな声だった。
「何をする?俺も奪うだけだ。結城さんの大切なものを・・・あんたを」
「よせ。正気じゃない」
「葛西が事故にあっていたとき、あんたたちは何をしていたんだ?二人で抱き合って、葛西を笑っていたのか・・・?」
三好の肩を掴み、床に引き倒すと、その上に馬乗りになった。
三好は抵抗しなかった。
木偶人形のように生気のない顔で、俺を見つめてこういった。

「気の済むようにしろ」

女のような顔をしているくせに、妙なところが男らしい。
俺は狂ったように、三好のシャツを引き裂いた。
ボタンがはじけ飛んで、ベッドの下に転がっていった。
それに構う間もなく、俺は三好の白い身体に顔を埋めた・・・。








inserted by FC2 system