クララの言葉を信じたわけではなかったが、その占い師は霊感があり、霊と交信して失せ物を探すらしい。
胡散臭い話だが、どうせ手がかりはなにもない。
行ってみることにした。

「恋人かえ?」
90は超えていそうな御婆さんが、その占い師、カーラだった。
俺の顔をみるなり、そういった。
「わかるのかい、御婆さん」
「わかるとも。この鏡に全て映っているよ」
テーブルの上には小さなひびの入った手鏡が置いてあった。
見ても何も映っていない。
「お前さんの恋人は囚われているよ。古い城の中にね。昔物語のお姫様みたいにね」
カーラはぶつぶつと呟いている。
「古い城?どこの城だい?」
「さあ・・・側に湖があるね・・・ああ」
「なんだい」
「早く・・・早く助けたほうがいいね・・・お姫様を。男はサディストだよ・・・しかも、お姫様に惚れている・・・殺しかねない」
「なにをしているんだ」
「聞かないほうがいいね・・・イッヒッヒ」
カーラは下卑た笑いを浮かべて、
「教えてくれ」
俺は金を積んだ。
「お姫様は・・・男と腰を振っているよ・・・朝から晩までずっとさあね」
「なんだと」
「しかもだんだん表情が柔らかくなってきた・・・感じているんだ」
カーラは俺が睨んでもびくともしない。
もっとも目が悪くて見えないのかもしれない。
白濁した灰色の目は、見えているのかどうかも怪しかった。

「場所はどこだ」
「湖の側に赤い塔のある城・・・ワイマール公の別荘さね。今はただの廃屋じゃよ・・・誰もいない・・・痩せた犬がいるだけ・・・」
俺は立ち上がった。

「気をお付けよ。お前さんの恋人は魔女じゃよ。男を狂わせる・・・」

葛西が魔女?
だが、俺はもうとっくに狂っているのかもしれない。







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