「三好と神永か。どうした(妙な取り合わせだな・・・)」

結城さんの部屋に来た。結城さんはゆったりと椅子に腰をかけて、読書をしていたようだ。
「たまには、結城さんと飲みたいと思いまして」
と神永が言った。

「構わんが・・・(様子がおかしい、なにか裏があるな)」
なかなか鋭い。だが、思考は駄々漏れている。

「酒なら持って来ました」
僕がウイスキーを出すと、結城さんは、黙ってグラスを三つ取り出した。

「つまみを取ってきますよ」
神永がいい、部屋を離れた。

「まあ、座れ(やっとふたりきりか。だが、すぐに戻ってくるだろうな・・・)」
「はい」
僕は座った。気まずい。
「最近、どうだ。(避けられてるような気がするのは気のせいか・・・)」
気のせいじゃありません。
結城さんの本音が怖くて、貴方を避けています。
「どうって、変わりありませんよ」
「そうか、ならいいが・・・(それにしては寄り付かなくなったな。今日も神永とふたりだし、これでは手が出せない)」
「・・・好かったです」
僕はいい、ウイスキーを舐めた。

「お待たせ。さきいかくらいしかなかった」
「ウイスキーとは合わんな(気の利かない・・・)」
「そうですか?」
神永はしょんぼりして、そのまま椅子に座った。
「まあ、飲もう(もう少し遅ければ、キスくらいはできたか・・・)」
「・・・」
やはり、思考が駄々漏れてくる。
だが、よく考えれば、今の僕なら瞬間移動でキスをかわすことくらい楽勝だ。
「わあ、凄く強いですね、これ」
神永が言った。
「そうだな(飲んで寝てしまえばいいのに・・・そうしたら、三好にあーしたりこーしたりいちゃいちゃできるのに・・・)」
僕は黙ってさきいかを噛んだ。
さきいか臭い僕とは、結城さんもキスをしたくないだろう・・・。





inserted by FC2 system