超能力を手に入れてから、気づいた。
世の中には、テレバスの通じない奴がいる。

それは、神永だ。

「よお、三好。いまから風呂か?」

「ああ」

「俺もあとから行くよ」

なぜか、神永の思考だけは読めないのだ。
読めたら読めたで、結城さんみたいなことにならないとも限らないのだが、なぜ、神永だけがテレパスが通じないのか、不思議だ。

欲望を剥き出しにしている相手と風呂に入るのは気が引けるので、神永はちょうどいい。田崎の場合だと、

「ああ、三好。いまから風呂か(俺もすぐ行く)」

「ああ、まあ」

「ゆっくり入れよ(目の保養だから)」
みたいな。

さらに甘利が加わると、
「三好、いまから風呂か(どうせ田崎も一緒だろう)」
と嫉妬むき出し。
その二人に挟まれて入るのは、さすがの僕でも嫌気が差す。

したがって、思考の読めない神永と一緒に浸かることになる。
「三好、石鹸とって」
「はい」
「さんきゅ」
神永に怪しい動きはない。至って普通に身体を洗っている。
「なんだ、じろじろ見て?そんなに俺っていいからだしてるか?」
見当はずれなことを言う。
体つきから言えば、小田切と福本、そして甘利には勝てないだろう。
軍人にしては虚弱な僕は、ひそかにコンプレックスを抱いているくらいだ。
「最近さ、お前ほとんど俺と一緒に入ってるよな?」
それはテレパスが邪魔で、他の学生とは入りたくないからだ。
だが、神永はそれを勘違いしたらしい。
僕の頭をぽんぽんとはたき、
「なにかあるなら、相談に乗るよ」
と、明るい笑顔で、言った。






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