朝、目が覚めると不思議な声が聞こえてきた。
食堂にいるはずの、田崎や甘利、小田切たちの声だ。
(今日も田崎は色っぽいな)
(甘利、夕べも激しかったな)
(福本はどうしたんだろう)
僕は、ベッドにいながらにして、彼らの声を聞いた。しかも、それはたぶん、心の声ともいうべきものだろう。
テレパス。
何が起こったのかはわからないが、僕は一夜にして超能力を身につけてしまったらしい。
能力はほかにもあった。物を動かすサイコキネキス。そして、瞬間移動。
これだけの能力があれば、他国を出し抜き、日本を勝利に導くことも可能かもしれない。なにしろ、他人の心が筒抜けなのだ。どんな秘密も・・・。
だが、僕が一番知りたいのは・・・。
僕は結城さんの顔を思い浮かべた。
結城さんが何を考えているのか。それさえ知ることができれば・・・。
僕の胸は期待に高鳴った。
知りたい。結城さんの頭の中を。
そうすれば、結城さんをこの手に掌握することができる・・・。