「してないよ、浮気なんか」
「本当か?」
「しつこいな、本当だよ」
「フウン?なら、身体を調べてもいいんだな?」
「えっ?そ、そこまですることないだろう!第一、浮気とかいうけど、君のほうこそ、サヨナラも言わずに消えた癖に、なにいってんだよ!」
僕は波多野の腕を押しやって、叫んだ。
「あれは・・・貴様が俺のことを・・・可愛いっていうから・・・」
「はぁ!?そんなことで!?」
「そんなこと!?男には可愛いなんて屈辱的だっ!!」
「そんなことで僕と別れたって言うのか!?」
「別れてなんかない!!ちょっと距離を置いただけだっ!!」

波多野は必死に、僕の肩をがくがくと揺さぶった。
目は吊りあがって、ぎらついている。人でも殺しそうだ。
「貴様っ!!俺と別れたと思い込んで、浮気したっていうのか!?」
「してないよっ!」
「だったら、今から調べてやる!!」

怪我人とは思えないパワーで、波多野は僕を縛り上げた。
いつもなら、僕のやり方なのに、いつの間にか体得したらしい。
そうして、ズボンを脱がすと、ためらいもなく、直接敏感な部分に指を入れた。
「!?」
僕は驚いて、わずかに背をそらした。
波多野は怒ったような顔つきで、僕の中を内診した。

「は・・・はたの」
「腫れてる・・・しごく最近のものだと思う。貴様は・・・誰かとセックスしたんだ」
波多野の声は、低くなった。

「言えよ。相手は誰なんだ」
「・・・波多野」
「言えよ。殺しはしないから。ただ・・・俺には貴様が相手構わず寝るとは思えないんだ。結構人見知りだし・・・もしかして・・・」

波多野の視線が、机の上の煙草の箱を指した。

「あの銘柄は、以前見たことがある。吸っていたのは・・・・・・佐久間、だ」
ドキン。
僕の鼓動は早くなった。







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