「戦争を終わらせたい?だが、戦争が終わったら闇物資は」
価値がなくなる。
戦争で物不足だからこそ、物価が高騰し、いつもの3倍の値段で物が売れるのだ。
「福本さん、闇物資に執着はないです」
ヤンは言った。
「彼はただ、戦争を終わらせたいだけなんです」

夜。
部屋に戻ると、福本が帰っていた。
「どうだ。出来そうか」
「どうだろう。まだわからないですよ」
実井は答え、シャツを脱ぐと、ベッドに横になった。

「ソファで寝ろ。貴様がいると、俺が眠れん」
「半分使えばいいでしょう?」
「そういう問題じゃない」

「ヤンが言ってましたけど、貴方は戦争を終わらせたいんだって」
「誰もが同じだろう」
「同じではありませんよ。帳簿を見ていて気づいたんですが、同じ口座に随分送金されていますね。・・・あれは、中国の革命軍ですか」
「・・・」
福本は答えない。
「中国が内乱になれば、労せずして日本が勝ちますからね。教科書のお手本のような破壊工作を、ここでしているわけですか」
「貴様には関係ない」
「ありますよ。僕だって貴方がここでしていることには興味があります」

「そんなに、小田切さんに会いたいですか」
「俺が私情で動いていると言うのか」
「他に理由がみつかりませんからね」

福本は実井をまたぐようにして、実井の上に乗った。
「その口を閉じろ」
福本は実井の唇を、自分の唇で塞いだ。

実井の目は、驚きに見開かれた。
福本さんが俺を抱こうとしている?
軽い眩暈を覚えて、実井の睫は微かに震えた。









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