ヴォルフは、佐伯の身体を愛撫しながら、長いキスをしていた。
佐伯の両足は無気力に投げ出されている。左手は吊る様に柱に繋がれていた。
「随分大人しくなってどうした?さっきまでの空元気は」
「汚い手で俺に触るな・・・」
「さすがの<魔術師>も、手錠で繋がれていてはどうしようもないようだな」
「・・・・・・さっさと俺を殺せ」
「そう焦るな。戦利品の味見くらい、ゆっくりとさせろ」
そういいながら、ヴォルフは佐伯のものを左手で握りこんだ。
僕はそこまで見ると、銃の長い先を、窓の隙間から差し込んだ。
幸い、ヴォルフは行為に熱中し、背後の警戒を怠っている。
ズガーーーン!
銃声が響いた。屋根の上のカラスが飛び立った。
ヴォルフは力なく前につんのめるようにして、佐伯の上に倒れこんだ。
僕は戸口に回りこみ、中に入った。
「・・・君か・・・」
佐伯の声は幾分ほっとしたようだった。
ヴォルフの身体からポケットを探って、手錠の鍵を取り出した。
手錠を外すと、ほとんど佐伯の左手は血まみれだった。
「この手はもう駄目かも知れんな」
佐伯は苦笑した。
「そんな・・・治りますよ・・・絶対」
佐伯の裸が眩しくて、眼のやり場に困る。
どういう鍛え方をしているのか、胸板は厚く、腹筋は割れていた。
いまのいままで、ヴォルフに抱かれていたせいか、眩暈がしそうなセクシャルな空気を纏っている。
僕はヴォルフの死体から緑色の裾の長い軍服を剥ぎ取ると、佐伯に着せた。
佐伯はみるみる、独逸情報部のエリート将校に早変わりした。
僕はシャツを切り裂いて、包帯を作り、佐伯の手を吊った。
「急ぎましょう、佐伯さん」
納屋に火を放ち、僕らはそこを脱出した。