「動くな!」

英語で、そう怒鳴られた。
見れば、3人の米兵が、俺を取り囲んでいた。

「頭の後ろで手を組め」

俺が言われたとおりにすると、米兵は顔を見合わせ、

「こいつ・・・英語がわかるのか?」
と囁きあった。

「膝まづけ」
膝をつく。

「・・・脱走兵か。お前はひとりか?仲間がいるのか?」

「ひとりだ。仲間はいない」

俺が英語で答えると、米兵はやはり顔を見合わせた。

「・・・通訳になるな。よし、連行しろ」

俺は引き立てられて、引きずられるように、連行された。



「君は脱走兵だそうだね?」
葉巻をくゆらした、上級将校らしい赤毛の男は、そう尋ねた。
「・・・そうなるのかもな。俺はただ・・・」
「我々に協力してくれれば、食事も睡眠も与えよう」
食事・・・。
ほとんど飲まず喰わずでジャングルを彷徨っていた。
眠ることも忘れていた。
ただ、神永の面影を探して・・・。
「協力?」
「実は通訳がマラリアにかかってね。重態なんだ。ひとり、尋問したい男がいる・・・なかなか頑固な男で、英語が分からないのか、分からないふりをしているのか、質問に答えない。なに、簡単な質問なんだがね」
赤毛の男は、大仰に首を鳴らした。

「勇敢にも小型飛行機で我々の軍艦に特攻してきた男だ・・・」

神永!
手錠をかけられて握り締めた拳がぶるぶると震えた。




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