明け方、自分のテントに戻ると、鈴木が起きていた。

「どこへいってた?海岸線のほうで爆撃があったろう」

「ああ・・・」

「椎名中尉と一緒だったのか?」

「まあね」

鈴木は一瞬探るような目をしたが、それ以上は聞いてこなかった。


その日の朝、朝礼があり、昨日の海岸線の爆撃と、近くに空母がいるに違いないこと。そして、その確認のために偵察機を出すことを告げられた。

偵察機?だが、ここにはパイロットがいないはずだ。
寄せ集めの野犬の群れような部隊である。戦闘機の操縦ができるようなエリートは、ここにはいない。
誰が乗るのか・・・。
そういぶかしんでいると、椎名中尉がぱっと敬礼をして、
「偵察には私が行きます。あとはよろしく頼みます」
と言った。


神永が?
俺は呆然とした。
偵察、というと簡単なようだが、偵察機が戻ってこないことなど、日常茶飯だ。
元はいたパイロットも一人減り、二人減りして、とうとうゼロになった。
そんな危険な任務に、神永が行くというのか。

朝礼の後で、俺は神永を捕まえて、
「おい!どういうことだ!」
と詰問した。

「仕方がないだろう。戦闘機を操縦できる者がほかにいないんだから」
神永は冷淡な口調でそう言った。
「だからって・・・お前が・・・」
「真島二等兵。ここでは俺は上官だ。ちゃんと敬語を使え」

神永ははぐらかすようにそういうと、俺の腕を振り切って、去っていった。







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