テントの中は薄暗い。
椎名はもう眠っているのだろう。

俺と鈴木は二手に分かれて、鈴木は俺に入り口を見張るように合図した。
「うっ」
うめき声が聴こえた。やったか。
俺はさっと周りを見回すと、人がいないことを確認して、中に入った。

「早速歓迎会とは、ありがたいな」
神永、いや、椎名の声だ。
ライターをつけてみると、ぼうっと辺りが明るくなった。

鈴木が、羽交い絞めにされて、椎名に取り押さえられている。
「眠りは浅いほうでね。君たちの気配で目が覚めた」

「貴方は・・・俺の知り合いに似ているのだが・・・」
椎名はそれには答えず、
「目的はなんだ?首をへし折られたくなかったら、言え」
穏やかに、鈴木を責めた。
鈴木は、青ざめて、唇が乾ききっていて、うまく話すことができない。
「俺たちは、貴方の目的を知りたかったのですよ。スパイだとの噂でね・・・」
「スパイ?」
椎名はにやりとした。
「日本軍には貴様らをスパイする余裕など残っていない。ただ敵の・・・」

「神永。神永だろう?」
俺は腕を伸ばした。
「俺に触るな」
椎名は、呟いて、顔をそらす。

「俺に、会いに来たのか・・・?こんなところまで・・・?」

「なんのことかわからないな」
椎名は冷たい目で俺を見た。

だが、その瞳の中に、一抹の哀れみが、確かに浮かんでいた。









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