「俺を縛る気じゃないんだろう?たった一度、寝たくらいで」

田崎の言葉が耳にこびりついて離れない。

甘利は自分の部屋のベッドに横たわりながら、煙草をふかした。
自分はなにか、田崎を怒らせるようなことをしたのだろうか。
<子猫のような彼女>ともあれきり会ってない。
彼女は少し目が三好に似ていたが、そんなことは今更・・・。

三好、三好はどうしているだろう・・・?


三好は、自分の部屋で、死んだように眠っていた。
拷問にかけられ、頭から浴びせられた冷水によって冷え切った身体は、血の気がなく、いつもは赤い唇も、白くなっていた。

部屋まで運んでくれたのは田崎だ。疲れ果てた三好に肩を貸して、長い廊下を歩いた。
部屋に入り、タオルを放って寄越すと、田崎は言った。
「こんな目に会ってもまだ、君はあのひとが好きなの?」

三好は怪訝そうな目をした。なぜ、そんな質問をされるのかわからないといったような。それを見て、
「君は物好きだな・・・呆れたよ」
言いながら、田崎は三好のシャツを脱がし始めた。

普段なら抵抗しただろうが、シャツは濡れている上、三好は思考力が落ちていた。
田崎の手が三好のベルトにかかったとき、三好はそれを手で制した。
「恥ずかしがっている場合じゃないよ。下も濡れてるよ、ホラ」
言いながら、田崎は器用にズボンを脱がした。
濡れた下着が、肌にはりついている。
田崎はそれを目で追いながら、三好の身体をタオルで拭いた。

それは、一見主人と従者のようだった。
三好の腕、背中、胸、腹、足・・・。三好は田崎に身体を預け、幼い子供みたいに頼りなく見えた。
田崎は三好をベッドに座らせると、髪を拭いた。
三好は、もう考えることをやめたようだ。
「よし、いい子だ」
髪を拭き終わると、田崎は三好をベッドに寝かせた。

「下着は自分で脱ぐんだよ・・・」
耳元で囁いて、田崎は立ち上がった。
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