波多野の部屋では、実井と波多野が裸でもつれ合いながら、お互いの主導権を争っていた。
「往生際が悪いな」
と実井。
「そっちこそ、いい加減大人しくしろよ」
と波多野。
「なにか武器は?素手じゃ俺には勝てない」
と実井。
「・・・自信だけは一人前だな」
と波多野。
「・・・そんなに、されるのがイヤ?」
「イヤだ。男の沽券に関わる」
「・・・ふーん・・・沽券ねえ」
つまらなそうに呟き、実井は布団に寝そべると、指で波多野を呼んだ。

「わかったよ。来いよ。男を立ててやるから」
「罠だろ?」
「信用ないなぁ・・・罠じゃないよ。見ての通り裸だし」
「・・・・・・」
実井の眩しいくらいに白いからだは、細い割には筋肉質で、服を着ていたのではわからないところが鍛えられている。
波多野はゆっくりと近づくと、後ろから抱きしめた。
「波多野?」

「さっきは、なんで三好を抱こうと思った?誰でもいいのか?」
三好が波多野を襲ったとき、実井もまた、三好を快楽の世界へいざなおうとした。
愉しければいい、という実井の発想は、波多野にはない。
「なんでって・・・退屈だったから」
悪びれずに答える。
「退屈・・・」

その答えは当然気に入るはずもない。
実井には普通の嫉妬心さえないのか。
そのことはまるで、実井を理解不能の化け物のように感じさせる。
何度抱いても無駄なのか。
実井は、自由すぎる・・・。
波多野は、抱きしめていた腕を解いた。

「でてけよ」
波多野は言った。
「この部屋から、でていけ」




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