「遅かったな」
田崎が尋問室から帰ると、甘利が部屋の前で待っていた。

「悪いけど、疲れてるんだ」
田崎はいい、甘利を無視して部屋に入ろうとする。
「待てよ」
甘利は田崎の腕を掴んだ。
「弟に随分ご執心じゃないか」
「別に、仕事しただけだ」
「仕事?」
甘利は田崎の表情を見て、低い声で言った。
「随分と愉しんだみたいだけどな」

「俺が尋問を愉しんだって?冗談だろ」
自分が三好にしたことは、誰にも知られていないはずだ。
三好さえも、覚えていないようだった。
ましてや外にいた甘利にはわかるはずもない。

「お前、三好が波多野たちと部屋にこもっていた時、随分いらいらしてたよな」
「あれは・・・三好が心配で」
「保護者の顔じゃなかった。嫉妬する男の顔だった」
「言いすぎだ。甘利」
田崎の声が低くなった。
田崎は腕をふりほどくと、
「俺を縛る気じゃないんだろう?たった一度、寝たくらいで」
「貴様・・・本気か」
甘利は低く唸った。

「俺が三好に尋問したくらいで興奮するわけないだろ。考えすぎだよ」
そういい捨てて、田崎は甘利を残し、部屋のドアを閉めた。





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