<小田切の部屋>

「すまないな。福本。俺はちょっと限界だった・・・」
と小田切。

「いいさ。誰だってあんな三好の様子を見れば、おかしくもなる」
と福本。
そっと水を差し出す。
小田切はそれを受け取ると、喉を鳴らして飲んだ。
その滑らかな喉を、福本はじっと観察している。

福本は、小田切の喉仏を見るのが好きだった。
男らしくて、それでいて繊細。
触れてみたくなる・・・。

「なんだ?じっと人の喉を見て。なんかついてるか」
「いや、うまそうに飲むと思っただけだ」
「ああ、うまかったが・・・。ありがとう」
小田切は福本にコップを渡すと、ごろりと横になった。

そして、目を閉じる。

誘っているのか?まさかな。

福本は自分の妄想を笑いながら、
「風邪引くぞ、小田切」
と言った。

お前は俺のことなんか、道端に生えた草ほどにも気にしない。
それが気楽といえば気楽で、不満といえば不満だ。
今、自分がキスを仕掛けたら、小田切はどうするだろう。
そんな妄想を打ち消して、福本は小田切に毛布をかけた。

「俺は戻る。またな」

小田切はどう見てもノンケだ。
だが、ホモ以外は帰ってもらった、というD機関の噂はどうなっているのだろうか・・・。
小田切が同類なら、こんなつまらないことで悩む必要はないのだが。

福本は頭をかきながら、皆のいる場所へと戻っていった。


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