温かい・・・。

三好は寝返りを打つと、ひどく温かい場所に出た。
さっきまで凍えていた手足が嘘のように、血が通い、自由になる。
白かった唇にも赤みが戻り、頬も同じ色に染まっていった。
三好はうっとりと目を開けて、自分が誰かの腕の中にいるのを発見した。

「・・・貴方は」
「・・・久しぶりだな。三好少尉」
自分を抱いているのは、佐久間中尉だった。

「どうして」
三好が驚くのも無理はない。三好は全裸、佐久間は上半身裸だった。

「説明すると、長くなるが、俺がこの部屋に来た時、貴様は凍死寸前の顔をしていた。冗談ではなく、本当だ。俺はただ、温めてやろうと思って、上着を脱いで・・・。やましい気持ちはない」
そういいながらも、佐久間の顔は赤かった。
「貴様は自分で裸になってベッドにもぐっていたんだ。俺が脱がした訳じゃない。そこのところを誤解するな」

服を脱がしたのは、田崎だろう。うっすらと覚えている。
服を脱がし、丁寧に身体を拭いてくれた・・・。

「頼むから服を着てくれ。俺も理性に自信がなくなっていたところだ」
佐久間の正直な告白に、思わず笑いがこみ上げてくる。
「別に良かったのに」
「なに?」
「抱いても」
「三好・・・」
佐久間は先ほどから三好の赤い唇に見惚れていた。
三好の言葉に誘われるようにして、唇に手を伸ばす。

「何をされた?着衣のまま海で泳いだのか?」

衣服はきちんと干されていたが、まだ濡れているのがわかる。
三好たち学生の訓練の厳しさは、見ていた佐久間も良く知っていた。
「そうじゃない・・・尋問だ」
「尋問?」
「よく覚えていないが、なにかまずいことをやらかしたらしい」
佐久間は伸ばしかけた手を引っ込めた。

「俺はもう行かなければ」
「待てよ」
三好は立ち上がる。佐久間は凍りついた。
目の前に、三好の白いからだが、生まれたままの姿で、存在する。

「これでも、なにもせず、僕を置いて出て行くつもりですか?」
「いや・・・だが、しかし・・・」
今日は結城中佐に伝言があって、立ち寄っただけだ。
つい、三好の顔が見たくなって、足を延ばしてしまったが。
早く、用事を済ませて帰らなければ、本部にも怪しまれるだろう。

「俺は仕事が」
言い訳をする唇は、赤い唇に塞がれた。










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