<結城の部屋>

三好が部屋に入ってきた時、結城は目を閉じて腕組をしたまま椅子に腰をかけていた。
(結城さん・・・?寝ているのか)
音をさせずにそっと近づき、結城の顔を見つめる。
それが合図のように、結城はゆっくりと目を開けた。

「いかんな・・・寝不足だ」
「お歳ですね・・・」
三好は唇の端をあげた。皮肉な物言いは、いつものことだ。
「馬鹿言うな。貴様のせいだ」

「僕のせい?なにをしましたっけ?」
「・・・年甲斐もなく、無理をさせおって」
「それはこっちのセリフですよ。僕がしたんじゃない、あなたがしたんでしょう?」
「貴様は若すぎるのだ」
決め付けて、結城は光のない目で三好を見た。
「貴方らしくもないことを。無理したんですか?」
結城はさっと手を振り、下がるよう指示した。

「えっ・・・嫌ですよ、まだ、まだここにいたいです」
三好は呆然として言う。
「・・・だだをこねるな」
渋い声で結城が言う。
「子ども扱いしないでください」
三好は抗議して、猫のような眼で結城をねめつけた。

突然、派手な音を立てて、神永が入ってきた。
「なにやってるんですか?俺を呼びましたか?」
「いいところへ来た。神永、三好を連れて行け」
「了解です!」
神永は三好を羽交い絞めにすると、部屋から引きずり出そうとする。
「いやだ!かみなが!やめろ!ゆうきさーん!」

結城は徐に立ち上がり、三好に近づくと、耳元でなにか囁いた。
三好の顔つきがみるみる柔和になり、やがてうっとりと目を閉じた。
目を開くと、三好は神永に言った。

「・・・・・・かみなが?あれ?俺は一体・・・?」



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