「貴様らなにやってんだ、こんな時間に」

3人で食堂にいると、波多野が降りてきた。

「甘利さんに追い出されたんですよ」
しれっとして中瀬が答える。
「甘利に?貴様らの部屋にいるのか」
怪訝そうな波多野の声。
「甘利さんは葛西といいことするつもりなんです」
中瀬が余計なことを言う。
だが、波多野の顔つきが変わった。

「甘利〜・・・こないだ俺を襲ったばかりの癖に、あのやろう〜」
なに?
甘利が波多野を襲った?
意外な組み合わせだ。

「許せん!あ〜ま〜り〜!!!」
叫びながら波多野は階段を駆け上っていった。

「良かったな、宗像」
秋元が俺の肩をぽんと叩いた。
「あの調子だと、肝心のところで水を差すだろうな。つまり未遂ってわけだ」
「何が未遂だ」
俺は秋元の手を払った。
葛西は俺の目の前で甘利にキスをしたんだ。
それだけでももう、俺の胸は嫉妬で焦げそうだ。

「そんな顔してるといい男が台無しだよ」
秋元がからかった。
「構わん」
俺は言って、再び煙草を銜えた。最後の一本だった。
空き箱を握りつぶす。
「波多野さんがあんなに嫉妬するなんて意外だね。僕、甘利さんには田崎さんだとばかり思っていたけど」
と中瀬。
「田崎さんの嫉妬は怖そうだな」
秋元が言った。
「戻らないのか?」
中瀬が振り返った。
だが、今行けばあらぬ現場を目撃しないとも限らない。
「あとで行く」
俺は煙草を吸わねばならない。その間に片はつくだろう。





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