「あれ?他の奴らは?」

波多野が部屋に戻った時、そこにいたのは甘利だけだった。
「外泊とか、夜勤とかいろいろ。今日は俺たちふたりだけみたいだな」
「えっ・・・冗談だろう?」
「そう露骨に嫌な顔するなよ。これからは毎日こうなんだからさ」
「ふっ、ふざけるな!誰が貴様となんか」
「焦っちゃって〜可愛いの」

波多野は窓際の自分のベッドの前に立った。
甘利はそのすぐ横のベットに寝そべっている。
「おい」
波多野は言った。
「間違っても、そこの境界線を越えてくるなよ!」
「境界線てなに?」
「隙間。ベッドの隙間を越えるなってこと」
「狭いよな。寝返り打ったら手が届きそうだ」
「打つな。まっすぐ両手を伸ばして寝てろ」
「無茶苦茶いうな〜・・・」

「ちょっと待て。甘利。そこは実井のベッドだろ」
「あれ、知ってたの〜?」
「自分のベッドに戻れよ!」
「細かいひとね〜いいじゃないの〜ふたりきりなんだもん。仲良くしようよ」
「蹴り殺すぞ」
甘利はしぶしぶ起き上がると、もうひとつ隣のベッドに移った。

「あ〜波多野くんが遠くなった。寂しい〜」
「抜かせ。田崎に言いつけるぞ」
「あいつはいまいないから大丈夫」
「戻ってきたら言う」
「それは勘弁して」
甘利は情けない声を出した。

「全く」
言いながら波多野は窓際のベッドに横になり、毛布を被る。

「波多野くん、もう寝ちゃった?」
甘利の声。
無視していると、だんだん近づいてきた。
「無視しないでよ。波多野くんてば」
「うるっさいな〜なんだよ!」
振り向くと、すぐ側に甘利が立っていた。
「だるまさんが転んだ・・・」







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