「宗像も葛西もよく帰ったな」

結城さんにねぎらいの言葉を掛けられても、俺は素直に喜べなかった。
葛西を庇うようにして、自分の部屋へ連れて行った。

「あれ?俺の荷物は?」
部屋はもぬけの殻だった。ベッドのシーツも引き剥がしてある。
「こっちこっち」
秋元が廊下で手招きしている。
「実は設定のミスがあって、結城さんが謝っていた。貴様たちを二人部屋から個人の部屋に移そうと思ったが、実は設定では10人部屋のはずだと。俺たち2期生は1期生の隣の大部屋で、4人で使えるんだけど・・・」
「どういうことだ?」
俺が怪訝な顔をすると、秋元はにやりとして、
「もう君が勝手な真似ができないってことだよ。俺も中瀬も同じ部屋だ」

「なんだと?」
俺が葛西を振り返ると、葛西は別段困った様子もなくて、
「いいんじゃないか?4人部屋。修学旅行みたいで楽しそうだ」
と言った。
「心にもないことを。どうするんだ。これから・・・」
「なんで困るんだ?別に二人が4人になったところで、なにも変わらん。プライバシーはもとからないし」
葛西は首を傾げる。
「本気で言ってるのか?二人きりになれないってことだぞ」
「別に構わないよ。なんか問題でも?」
そう改めて言われると、こっちも文句を言いにくい。

「1期生は8人部屋なんだろ?僕達は4人で同じ広さの部屋を使えるわけだし、良かったじゃないか。広々として」
「広さの問題じゃないだろう・・・」
会話を聞いていた秋元が、
「ベッドの位置だがどうする?宗像、葛西、俺、中瀬、でいいか?」
「いや、葛西、俺、秋元、中瀬がいいだろう」
と俺が言うと、
「ふうん?両手に花か」
秋元がにやりとした。俺が、余計なことを言うなと目配せをすると、
「本当のことは都合が悪い?葛西、実はね〜」
俺は慌てて秋元の口を掌で塞いだ。
「なにやってんだ。貴様ら」
葛西が呆れて、口を屁の字に曲げる。
「なんでもない。じゃれてるだけだ」
俺は冷や汗をかいた。
これからは秋元と葛西に挟まれて生活するのか・・・。
おまけに、あの鋭い中瀬もいる。けつが割れそうだ・・・。






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