「嫌だ!小田切!やめろ!」
僕は叫び、抵抗し、そして、ベッドから落ちた。


「痛・・・」
ぶつけたひじをさすりながら、起き上がる。
朝日が差し込んでいた。
そして、僕はひとりだった。
「夢・・・か」
額が濡れていた。身体を抱きしめると、あの豊満な肉体は消えうせ、いつもの筋肉質な男の身体に戻っていた。


食堂に行くと、波多野がにやにやとしていた。
「なんだよ」
「貴様、ベッドから落ちたろう。凄い音だった」
「うるさいな」
「小田切の夢を見てたのか?どんな夢だ?」
聴こえてたのか。
だが、あの夢を話すことはできない。
「俺の夢?どんな夢だ?」
小田切がやってきた。
なんとなく、顔を見ることができない。

「なんでもないよ・・・こっちの話だ」
乳房を鷲掴みにされた感覚。あまりにもリアルで、夢とは思えない。
「三好」
立ち去ろうとする僕を、小田切が止めようと腕を掴んだ。
僕は思い切りその腕をふりはらい、
「邪魔をするな」
そういって、睨んだ。
「何を怒ってるんだ?俺がなにかしたか?」
小田切は驚いている。

「貴様は夢の中で三好を襲ったんだよ」
波多野が言った。
「え?俺がか?」
「三好の返事は、<僕は結城さんの子供を産むんだ!>だ」

波多野〜〜〜。
そのとき、偶然にも今度は結城さんが顔を見せた。
「?俺を呼んだか?」
「なんでもないです・・・」
波多野、小田切、そして僕は声をそろえて、そう答えた。

恥ずかしくて、結城さんの顔を見ることができなかった。

だが、一瞬結城さんと赤ん坊をあやす自分を想像してしまったのは事実だ。
女になったらなんて妄想は、金輪際しないことにしよう・・・。






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