「のぼせたのか?」
部屋で横になっていると、福本が入ってきた。

「ああ・・・少しのぼせた」
「三好と一緒だったのか」
さすがに鋭い。
福本はいいながら、煙草を取り出し、とんとんと整えた。

「結城さんに、子供を産んでくれと言われたらしい」
「ああ?結城さんは新人の芸者を口説くときに、よくそんなことを口にするな」
「そうなのか?」
「深い意味はないだろう」
「三好は本気にしてた」

額に手を当てたまま、眼を開けると、案外近くに福本の顔があった。

「三好にあてられたのか?あれは女じゃないぞ」
「わかってる・・・」
上半身を起こすと、福本の指が俺に煙草を銜えさせた。
火をつける。

「わかってはいるんだが・・・」
三好の白い乳房が、目に焼きついている。
考えてみれば、女と風呂に入ったのは生まれて初めてだ。
裸を見たのだって、数えるほどしかない。
子供の頃に、ちづねぇの裸を隠れて覗いたことくらいしか・・・。

「三好の奴、無防備だな」
福本が言った。
「まだ、自分が女になってることに違和感があるのだろう」
それはこっちも同じだが。
福本は煙草をふかすと、冷たく言った。
「少し痛い目にあえば、気をつけるようになるさ」

頭の中を見透かされているようで、居心地が悪い。
俺はさっきから、三好の部屋を訪れて、闇の中三好の身体をまさぐる自分を、ずっと想像していた。
あの白くてまろやかな三好の少女じみた身体を、自分のものにしてしまいたい。
その衝動が、悪魔のささやきとなって、耳元にこびりついた。
犯せ、犯せ、と。





inserted by FC2 system