さすがといおうか。
D機関員はこんなことにも動じずに、何事もなかったかのように解散していった。
だが、問題は結城さんだ。

神永が戻ってきた。
「信じなかった」
「え?」
「<貴様たちのいつもの悪戯だろう?>とか言って、俺の言うことを信じてくれなかった。意外と石頭だ」
それはそうだろう。
他の学生たちだって、服を脱ぐまでは半信半疑だった。
「まあ、だが実際に貴様を見れば、結城さんだって」
「服を脱ぐのか?」
僕は嫌そうな顔をした。
「さっきは平気だったくせに、結城さんの前だと駄目なのか?」
神永は意地悪く言った。

結城さんにこんな身体を見られるくらいなら、死んだほうがましだ。
僕が黙って神永を睨むと、
「わかったよ。なんとか脱がなくて済む方法を考えよう。いっそ、隠すか?」
だが、豊満な胸は、さらしを巻いても目立ちそうだ。
「女は不便だなあ・・・いっそ、女装ということにしたらどうだ?訓練のために女装してるっていえば」
神永にしてはいいアイデアだ。

「でも、もう女になったって、言ったんだろう?手遅れだ」
と僕は言った。
「そうだな・・・いくらなんでも不自然だよな」
と神永。
「さっきの小田切を見ただろう?僕はもう女なんだ」
女がいれば、男は男を意識し始める。
小田切が視線をそらしたのも、女を意識したからだ。

「小田切はやばいかもな。女慣れしてなそうだからな」
神永は言った。
「ふたりきりにならないように、気をつけたほうがいい・・・なにせここは男所帯だからな」
「いきなり襲ってくるようなことはないだろう」
と僕は言った。
「わからん。貴様ももう無用心に裸を見せたりするな。煽ってると思われるぞ」
神永が奇妙な目つきで僕を見た。

神永もか。
僕はひそかにため息をついた。





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