「粉塵爆発だ」
「粉塵爆発?」
「空中に浮遊する酸素と粉塵、あと火の気があれば、その濃度によって爆発の威力が異なる」
福本はふーっと煙草の煙を吐いた。
「だが、現場に粉なんてあったか」
と小田切。

「逃げる際に調理場にいた女がコーンスターチを撒き散らしていったらしい。警察の手入れだと勘違いしての行動だろう。どういう具合か、それに火炎瓶の火がついたんだな・・・それで、ボム!だ」
「結果的には過激派の本拠地をひとつ消去できたわけだが・・・いささか派手にやり過ぎたな。上にどう報告すればいいんだ?」
小田切はぼやいた。

「ところで王子様はどうしてる?」
と福本。
「お姫さんが看病しているよ」
と小田切。


市立病院。
整形外科の病室に、実井はいた。
救急車にそのまま連れ添ってきたので、振袖のままだ。
救急隊員は、和服の妖艶な美少女だと、勘違いした。

「僕のせいで・・・」
「貴様のせいじゃない。あいつらのせいだ」
波多野の背中はガラスを抜いた後、包帯でぐるぐるまきにされた。
「あいつらって、過激派の連中?」
「小田切と福本だよ。くだらん作戦に無関係の貴様を巻き込んだ」
「僕が行きたいって言ったんだ・・・女装した自分が嬉しくて、それで」

「貴様を放置した理由を聞いたか?貴様の本性が知りたかったんだとよ・・・ふざけやがって・・・」
「小田切さんが・・・」

「福本だよ。元凶はあいつだ。貴様を女装させたのも、外に連れ出したのも、過激派をつる餌にしたのも、全部あいつの仕業だ」
波多野は親指の爪を噛んで、
「この傷が治ったら、絶対仕返ししてやる・・・」
と言った。

「でも、かっこよかったよ、火炎瓶投げる波多野」
実井は波多野をおだてながら、その耳をつまんだ。
「なんだよ」

「その傷が治ったら、仕返しなんかよりも、もっといいことしようよ」

そう囁いて、実井は波多野の唇に、ちゅっと、可愛くキスをした・・・。







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