「爆発するぞ!逃げろ!」
誰かが叫んだ。
人々は雪崩を打って入り口に殺到した。
悲鳴や怒号が響いた。

勝手口から外へ出た花、波多野、神永らは、外で煙草を吸っていた小田切と福本に遭遇した。
「貴様ら、無事だったか」
「無事だったかじゃねーよ、実井を置き去りにしやがって」
波多野は花の手を引いていた。

「客を追い出したな、どうやった」
と福本。
「火炎瓶をキッチンに投げて、爆発するぞ!逃げろ!と叫んだだけだ。・・・爆発なんかするわけないだろ」
「叫んだのは俺だ」
と神永。
「僕はその場にいただけ」
と実井。

「今日の任務は、ここの2階で開かれている会合の邪魔をすることだったんだ。花を連れてきたのは、たぶん女を巡って乱闘騒ぎになり、警官隊が駆けつけて、会合がお開きになるのを狙ってのことだった」
と福本。

「この店は過激派の本拠地でね。さっき声をかけてきた若者が首謀者だ。たぶん、女を引き込んで人集めに使う気だったのだろう」
と小田切。
「女は役に立つからな。売れば金になるし」
と福本。
「おい、なんか店から煙がでている」
と神永。

「やばい。逃げろ!」

次の瞬間、窓にもうもうとした煙が垂れ込めたかと思うと、窓ガラスを突き破り、炎が噴出した。


「波多野・・・!」
咄嗟に実井を庇った波多野の背中に、大きなガラスの破片が突き刺さっていた。

「そんな・・・嘘だろう?」
実井が波多野の身体に守られたまま、目を見開いた。

「・・・実井・・・俺な・・・」
「しゃべるな、波多野・・・すぐに・・・助けが来る・・・」

「お前のこと・・・最初からずっと・・・すきだった・・・ぜ・・・」
ニヤリと笑って、波多野はくず折れた。




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