アヴィリオは目を覚ました。見知らぬ天井だった。

「ここは・・・どこだ・・・天国じゃないのか」

「天国になんか行ける身分じゃないだろう?この殺人鬼」

ネロだった。

「殺さなかったんだな・・・どうして」
「お前と同じ理由だ。ただ、殺したくなかったんだよ」
ネロは言った。
アヴィリオの身体には包帯が巻かれていた。
「弾はわき腹を貫通した。お前はショックで気絶していただけだ。俺が後部座席に乗せてここまで運んだ。近くの安いホテルだ」

「・・・喉が渇いた」
「パイナップル食うか?」
ネロはパイナップルの缶詰を取り出した。
「随分甘やかすんだな」
「・・・これしかないだけの話だ。缶切りがないな」
「俺の尻ポケットにある」
「どれ」
ネロは毛布の中に手を突っ込んだ。
「そこじゃない。もっと右だ」
アヴィリオが言った。
「誘うなよ・・・ああ、あった」
ネロは缶切りを手にした。
器用に缶切りを動かして缶をあけると、パイナップルを指でつまんだ。
「ほら、口開けろ」
アヴィリオが大人しく口を開けると、ネロが指ごとパイナップルをアヴィリオの口に押し込んだ。
それから指を取り出して、ネロはそれを舐めた。
「汁もいるか?」
「ああ」
ネロは缶をアヴィリオの口元に持っていくと、傾けた。
アヴィリオは汁を飲んだが、汁は溢れて顎を伝わり落ちた。

ネロはそれを指で拭ってやった。
アヴィリオの目が妖しく光った。
「なにかいいたそうだな」
ネロが言った。

「なぜ、優しくするんだ?俺を殺そうとしたのに」
「決まってるだろう。お前が好きなんだ」
ネロは答えた。












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