「おい、大丈夫か」

揺さぶられて目を開けると、秋元が覗き込んでいた。
珍しいくらい張り詰めた顔だ。
だが、それは一瞬だった。すぐにいつものふてぶてしい秋元に戻った。

「なんだ。・・・たいしたことはないみたいだな」
「抜かせ」
身体が鉛の様に重い。そして、下半身が火傷したように疼く。
初めて味わう痛みに、僕は顔をしかめた。
「お前、ほんとに初めてだった?」
「なんで」
「瀬尾さんとはどこまでやったんだ」
答える気にもならない。
「なにそれ、嫉妬?」
「まさか。純粋な好奇心さ」
秋元は嘯いて、口元を歪めた。
「答える義務はないだろう?」
「もったいぶるなよ。どうなんだ」
珍しくしつこい。
僕の顎を持ち上げ、瞳を覗き込んでくる。
「どうでもいいだろう」
「もういっぺんやってもいいんだぞ、俺のほうは」
脅迫めいたセリフに、僕はかちんときた。
「脅す気か?その手には乗らないよ」
「本気だったら?足腰立たなくなりたいの?」
柔和で、どちらかといえば女性的な秋元の口から、過激な言葉が出る。
僕は目を眇めた。
予定外の情事で、興奮してるのは僕だけじゃないみたいだ。
なんだか不思議だ。
ついこないだまで、秋元は手の届かない白馬だった。

「どうかしてるよ。秋元。貴様らしくない」
そういうと、秋元はむしろ剣呑な表情を見せた。
言い当てられてむっとした。という感じだ。
秋元は僕の顎から手を離すと、顔を背けた。
「どうせ俺らしくないよ。お前に手を出すなんて、俺も落ちたものだな」
「どうかしてたんだよ。それだけだ」
僕は呟いた。
「貴様はただ、宗像の代わりを僕に求めたんだろう?僕は気にしてない・・・もう、忘れよう。お互いのために」








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