部屋に戻ると、秋元が起きていた。
いつかとは逆パターンだ。
あのときは秋元が宗像の部屋から戻ってくるところだった。

「朝帰りか?」
「まだ夜明け前だろ」
「それでも朝帰りだよ」

あれ?なんだか不機嫌だ。
絡んでくるなんて珍しいな。

「もう寝るよ」
ベッドのうえに倒れこみ、僕は目を閉じた。

「瀬尾さんのところにいたのか?」
「ああ」
「・・・まじか」

秋元は黙った。

「本当に瀬尾さんと寝るとは思わなかった」
「・・・寝てないよ。途中で薬が切れて正気に戻ったんだ」
「薬?」
「瀬尾さんが作った惚れ薬、瀬尾さん、自分で飲んだんだ。未完成だったみたいだ」
「何の話だよ」
「だから、もう、いいだろ。何もなかったよ。嘘じゃない」
何で僕が秋元に釈明しないといけないんだ。
秋元は宗像と寝たとき、もっとしれっとしていた。
「どうだかな」
秋元の声は尖っている。
信じてないな。
まあ、夜明け前に戻って、なにもなかったっていうほうが無理かもしれないけど。


瀬尾さんは正気に帰って、必死に謝っていた。
そのとき、ドアが開いて、甘利さんが顔を出した。
「お〜、瀬尾さん、あれ、出来てる?あれ、中瀬くん、なんでいるの」

あの媚薬は、甘利さんの注文だったのか・・・。
妙に納得してしまう。遊び人の彼なら、ありうる・・・。

「もしかして俺、お邪魔だった?ごめんね、中瀬くん」
頭をぽんぽんとされて、僕はまた子ども扱いされてしまった。

秋元の視線を感じながら、僕は眠りに着いた。
微かな罪悪感を覚えつつ、船を漕ぎ出した。
僕は瀬尾さんを利用したのかもしれない。








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