目を覚ますと、なぜか瀬尾さんがいた。

「どうして」
「中瀬さんが熱を出したって、秋元さんに聞いてきました。これ、熱さましです」
「秋元が?」

身体が熱いと思っていたら、熱が出ていたのか。
僕は瀬尾さんの渡した薬を飲んだ。
「なんかいってた?秋元」
「中瀬さんのことをよろしくっていって、いなくなりました」
秋元め。
僕が瀬尾さんが好きだと、本気で思っているのか。
勿論、瀬尾さんは嫌いじゃない。話も合うし。
だけど。

「秋元さんは、中瀬さんが好きなんですね」
「え」
「凄く心配そうでしたよ」
秋元が?
「そりゃ・・・同室だから・・・」
「中瀬さんも、秋元さんが好きでしょう?」
瀬尾さんの眼鏡の奥の瞳が、悪戯っぽく光った。
瀬尾さんは僕に体温計を銜えさせた。

「ほんとはわかっていたんです。惚れ薬なんて作っても無駄だって。お二人にはなにか特別な・・・絆があるんでしょうね」
「ないよ、そんなの。秋元が好きなのは・・・」
宗像だ。
宗像は葛西が好きで、葛西は・・・。

「秋元さんが好きなのは、中瀬さんですよ。賭けてもいいです」
瀬尾さんは言った。
瀬尾さんは僕の銜えた体温計をとり、
「微熱ですね」
といった。
「寝てれば良くなるでしょう。無茶はしないで、大人しく寝ていてくださいね。秋元さんには僕が言っておきますから」

最後の言葉に含みを持たせて、瀬尾さんは立ち上がった。
ばれているのか。
僕は毛布にもぐりこんで、赤くなった顔を隠した。







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