宗像は行ってしまった。
引き止めたけど、聞かなかった。

所詮、俺は葛西の代わりだったんだ。
わかってはいたが、虚しさは残った。

「宗像は旅立ったのか」
中瀬だ。
「ああ」
「無駄なことを」
可愛い顔の割りにシュールな中瀬は、そう評した。
「無駄かどうかはまだわからないだろ」
「わかるよ。葛西だろ?生きてるもんか」
椅子に逆向きに腰をかけている。
そうしたまま俺を見ていた。

「寂しい?宗像がいなくなって」
「まあね。慰めてくれる?」
「馬鹿だな」
中瀬は誘いに乗らない。
少し頬を染めて、嫌そうな顔をした。
「君はいつもくだらないことばかり・・・」
「くだらないかな?誰かと寝ることが」
「くだらないよ。恋愛なんてさ」
「知らないくせに」
俺がからかうと、中瀬はむっとして、
「決め付けるなよ。僕だって・・・」
「知ってるよ。好きなんだろ?瀬尾さん」
「瀬尾さん?」
中瀬の眼鏡の奥の目が丸くなった。

「瀬尾さんって、なんでそこに瀬尾さんがでてくるんだよ?」
「なんでって、仲いいからな」
俺はベッドに寝そべって、片方の肘で頭を支えた。
「仲いいっていっても、話が合うだけだ。機械のこととかで」
「それだけ?」
「他に何があるって言うんだよ」
「瀬尾さんと寝てもいいって前に言ってた」
「あれはっ・・・言葉の綾で・・・」
「俺とは?寝てもいいんじゃないの?」

「そうやって茶化しているうちは、本気にはしないよ」
中瀬は言った。







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