ふいに、唇が離れた。
「やめた」
呼吸が楽になって、僕は大きく息をついた。

宗像は僕から離れて、自分のベッドに戻り、どさりと身体を横たえた。
「・・・冗談だ」
冗談だと?
取り残された僕は、非難がましい目で宗像を睨んだが、奴は目を閉じて、動かなかった。
「ふざけるな」
もう口を利かないからな。
僕は再び背中を向けると、それでも幾分ほっとして、身体を丸めた。


「いつまで怒ってる気なんだ?」
「うるさい。話しかけるな」
無理やりキスしておいて、それを冗談で済ませた宗像を、許す気にはなれない。
1週間口を利かなかったところ、とうとう宗像が音を上げた。

「こないだのことは俺が悪かった。謝る。これでいいか?」
「謝ってないじゃないか!ちゃんと、僕の目を見て、あんなことは二度としないと誓え」
すると、宗像は肩をそびやかして、
「それはできない」
と言った。
「できないってどういうことだ」

「俺は、毎晩貴様の寝顔を見て、我慢してるんだ」
その言葉に、僕は頬が赤らむのを感じた。
「なにを我慢するっていうんだ」

「貴様を、抱きたいんだ」
「何・・・言ってるんだ・・・また、冗談なのか・・・?」
あとずさると、背中に壁が当たった。
それ以上に逃げ場はない。
宗像はゆらりと近寄ると、壁に片手を突いて、

「貴様が好きなんだ・・・真島のせいで、それがわかった・・・自分でも気づかなかったんだ・・・ずっと、貴様に心引かれていたこと」
「・・・人が来る・・・くだらんことを言うな・・・」
「見られても構わない」

「悪いが、そこを通る。どいてくれ」
冷たい声がした。振り返ると、秋元が冷たい目で僕達を見つめていた。







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