ノックもせずに扉が開いた。

「葛西。風呂にいかないか・・・宗像・・・」

タイミングがいいというか、悪いというか、秋元だ。
「俺のベッドでなにをしてるんだ?穢さないでくれよ」

「汚いものみたいに言うな」
と宗像。
「実際、汚す気なんだろう?」
皮肉を返されて、宗像は言葉に詰まる。

「なにを赤くなってるんだよ!馬鹿!」
僕が背中を叩いた。宗像は立ち上がる。
タオルを手にとって、
「妙な気を起こすなよ」
秋元に釘を刺した。
「そっちこそ」
秋元は言い返して、僕の方を見る。

秋元が僕に妙な関心を寄せることはないだろう。
だが、釘をさされてみると、ちょっと意識してしまう。
「気にするなよ」
僕の心を読んだのか、秋元はそういった。

風呂に浸かりながら、宗像のことを考えていた。
あのまま、秋元が来なければ、どうなっただろうか・・・。真島の時みたいに・・・もし。
「邪魔だった?さっき」
秋元は心を読む。
そんなところが、ちょっと苦手だ。
「わざとだろ」
「ばれたか。そうだ。宗像が入っていくのが見えた」
「自分のベッドを使われるのが嫌だから?」
「それもあるかな。でも、違うよ」
秋元は湯船に入ってきた。ふたりだと、少し狭い。

「もしかして、監視してるのか?僕達を」
「ああ、俺がスパイだって?」
秋元は指でピストルを作り、撃つマネをした。

「社内恋愛は禁止だ。手を繋ぐのも、並んで歩くのも、人工呼吸も禁止だそうだ」
「結城さんが?」
「破れば罰金だそうだよ。まいったな」

真面目な顔で、秋元は嘯いた。








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