そう言われても、僕は釈然としなかった。
身代わりということで、高すぎるプライドが傷ついてもいたし、納得がいかなかった。


中瀬はまた入院だ。
中瀬のいない部屋のベッドにひとり、横になっていると、ノックする音がした。
「誰だ」
「俺だ」
宗像の声だ。

「入れば?」
僕の声と同時に、ドアが開いた。

「僕は三好の代わりなんだと。貴様は小田切や福本の代わりだ。どう思う?」
「風呂、入ったのか」
「人の話を聞けよ」
「まだだろう?今日は俺たちが先だ。入って来いよ」
「風呂なんかどうでもいい。僕達は一期生のおまけなんだぞ?腹は立たないのか」
「別に立たない」

こいつ、プライドはないのか。
宗像は風呂上りらしく、頭にタオルをかけていた。

「まさか、知っていたのか?」
「いや、初めて聞いたな。そんな話は。誰が言ったんだ?」
「結城さんだよ・・・」
「また、結城さん、か」

宗像の目が冷たくなった。そうして、つかつかと部屋に入り込み、向いのベッドにどっかりと腰を降ろした。

「結城さんが何を言おうと、貴様は貴様だ。三好さんは三好さんだ。貴様が三好さんになる必要はない」
「だけど、結城さんは三好が好きなんだ。特別に好きなんだよ・・・結城さんに好かれるためには、三好を完全にものにしないと」
「まだそんなことを言ってるのか。落とすの、落とさないのと」
「貴様が言い出したんじゃないか」
「だから、あれは冗談だって・・・」
「冗談?貴様にはなんだって冗談なんだろうが・・・こないだだって」
僕が、こないだのキスのことを持ち出すと、宗像は顔色を変えた。
「あれは・・・貴様が・・・」

宗像の手が、僕の手を掴んだ。
唇が、僕の唇の先に触れた。







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