異変に気づいた宗像と秋元も後をついてきた。

だが、中ほどまで戻っても、中瀬の姿は見えない。
スタート地点の灯台を見れば、誰かが大きく手を振っている。
福本だ。

「・・・・・・は、大丈夫だ!」
海風でよく聴こえないが、中瀬を救助したのだろう。
僕はほっとして、宗像と秋元に灯台を見るように合図した。


「最後は秋元だな」
結城さんに言われて、
「ええ〜そりゃないでしょう」
秋元は抗議した。
「中瀬のことがなければ、俺は2番手でしたよ」
「誰も中止とは言わなかったはずだ」
結城さんはにやりとした。

中瀬はスタートしてからすぐに心臓麻痺を起こし、溺れかけた。
福本が助けなければ、命はなかっただろう。
水温が低すぎたのだ。
もともと中瀬は身体が丈夫そうには見えない。よく選ばれたものだと思う。

「なにかいいたそうだな」
結城さんが僕を見つめた。感情のない瞳だ。
「・・・僕は、三好さんの代わりですか」

「不満か?」
「否定しないんですね・・・」
結城さんは、僕の顔を見て、
「貴様だけじゃない。二期生は意図的に容姿の似ているものを選んだ。貴様は三好、宗像は小田切や福本、秋元は田崎や甘利、そして神永、中瀬は実井や波多野といった、その気になれば入れ替わることも可能な人間を選抜したのだ」

二期生全員が一期生の補完だというのか・・・。
僕は唇を噛んだ。

「驚くには当たるまい。スパイとは顔のない存在だ。確かにその人は知っているが、顔だけはどうにも思い出せない、その程度でいいのだ。貴様が三好に代わり、あるいは三好が貴様の代わりになる。入れ替わりには誰も気づかない」
結城さんはコツコツと杖を鳴らして、近づいてきた。
そうして僕の肩に左手を乗せて、耳元に囁きかけた。

「貴様は見込みがある」










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