一期生と二期生には格差があった。
一番大きいのは、一人部屋がないことだ。
一人部屋じゃないということは、プライバシーはないということだ。

明け方、部屋に戻ると、宗像は起きていた。
「あいつと、寝たのか」
単刀直入に、尋ねる。
俺は質問には答えずに、上着を脱いだ。

「質問に答えろよ」
「答える義務はないね」
そう突っぱねると、
「否定しないってことは、寝たんだな」
宗像は低い声で言った。

「なぜだ?別れさせるにしても、やりすぎだ」
「そして一番確かな方法だ」
僕は言い返した。

「商売女を雇えば良かっただろう」
「相手はプロのジゴロだぞ?そんなの、すぐに見抜かれる」
僕はむすっとしたまま、毛布に包まって背中を向けた。

宗像が立ち上がる気配がした。近寄ってきて、髪を触った。
「嬉しいか?卒業することが」
「嬉しいよ。卒業試験に合格することを思えば、安いものだ」

真島と神永を別れさせることなど、簡単だ。
真島は確かに、僕を抱いたのだから。

「お前、男に抱かれたのは初めてだろう」
「馬鹿にするな・・・ケイケンくらい、ある」
だが、僕の経験は、高校時代に、友達と戯れでしたキスどまりだ。
宗像の見通すような言い方に、腹が立つ。

「・・・どうだった」
「どうって・・・好かったよ」
本当は痛くて辛いだけだったが、見栄を張ってそういった。
宗像の掌が、俺の髪を撫ぜた。
「好かったか・・・それは、良かった」
「良かった?どういう意味だ」
「いや、こっちの話だ。俺も安心した」
安心した?どういう意味だ。
俺が首をひねって振り向くと、宗像の、真剣すぎる眼差しとぶつかった。

「お前は潔癖なところがあるから、男に抱かれたら自殺するんじゃないかと危惧していた。でも、その心配がないなら・・・」
「待て、誰の話だ」
「口説いてるのがわからないのか?勿論俺の話だよ」
宗像の声は、どこか投げやりだった。






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