仕事で家を空けることが多かった俺は気づかなかったが、三好は随分前から阿片をやっていたらしい。

気づいた時には、立派な中毒患者だった。

阿片はケシからできる麻薬で、鎮痛や陶酔の効果がある。左腕を義手にした時に、医者が大量にくれたものを、使わずに神棚に隠しておいたのだが・・・。
迂闊だった。

「遊びでちょっと吸ってみただけですよ」
三好は悪びれずに言った。
「ふわふわとして、いい気持ちです・・・貴方のいない寂しさも感じなくなる」

俺は三好を部屋の中に突き入れると、畳に押し倒した。
「俺がいなくて寂しかったから、阿片を吸ったというのか?」
「・・・そうですよ。眠れない夜なんかに・・・」
阿片は不眠の治療にも使われる。
スパイなだけあって、効能には詳しいのだろう。

「僕、勘違いをしていたんです・・・<真っ黒な孤独>は、ひとりぼっちのときに感じるのではなくて、ふたりでいるはずのときに、より孤独を感じる、その耐え難い孤独感のことなんだって・・・」
三好の唇が妖しく濡れている。
俺はその唇を塞いだ。

舌を絡めあい、三好の浴衣を脱がした。
驚くほど白い、すらりとした肢体が現れる。
「女のようなことを言うと、呆れているんでしょう?」
三好の少し吊り上がった目が、猫のように光った。
「でも僕を女にしたのは、貴方だ」

三好の白い上半身に顔を埋めると、三好の腕が俺の頭を抱きかかえた。
愛撫するたびに、可愛い喘ぎ声を立て、三好は俺の愛撫に答えた。
指で十分に馴らしたあとで、三好の中に身体を突き入れると、三好の喘ぎは大きくなった。

「・・・あぁ・・・結城さん・・・僕は壊れる・・・壊れてしまう・・・」

貴方のことが好きすぎて、僕は壊れてしまう。

三好の唇は、そう呟いた。








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