「城田くん、良かったら僕をスケッチしてくれませんか」

そう誘われた時、僕がどんなに嬉しかったか、とても言葉にはできない。
三好さんは、僕を家の中に誘い込み、浴衣を脱ぐと、妖しい瞳をした。

「貴方の好きにしてください」

僕は夢中でスケッチをした。
何枚も三好さんの裸を模写して、気に入らなければ破き、また模写した。

「もうスケッチはいいでしょう?僕もモデルは飽きた」
そう言って、三好さんはすっと浴衣を羽織った。
「もっと、いいことしませんか」

三好さんは、僕を後ろから抱きしめた。
鉛筆が転がった。
僕は、三好さんにキスされていた。

僕は、三好さんの身体を畳に押し倒して、唇を重ねた。
白い足の間に足を割りいれ、半裸の三好さんの身体をまさぐった。
ひどくすべらかな肌は、しっとりと汗ばんでいて、手のひらに吸い付くようだった。
人を抱くのは、特に男を抱くのは初めてだったが、三好さんは慣れているらしく、うまい具合に僕を誘導した。
「・・・いいですよ・・・城田くん・・・上手ですね・・・」
そんな風に褒められて、僕は自分が三好さんを抱いているのか、三好さんに自分が抱かれているのか、ちょっとわからなくなった。

三好さんの身体は、見た目よりもずっと筋肉質で、華奢な割には鍛え上げられた感じの肉体をしていた。白く、線の細い美少年の印象を裏切るような、不思議な肉体だ。
「三好さん、貴方はもしかして・・・」
僕がいいかけると、三好さんは人差し指を唇に当てて、
「人にはそれぞれ秘密があるものですよ、城田くん」
と言った。

事が終わった後、僕は放心して天井を見ていた。
いかに向こうから誘われたとはいえ、とうとうやってしまった・・・。
結城中佐の怒る顔が眼に浮かぶ・・・。
怒るどころか、殺されるかもしれない。
僕を雇ったのは、三好さんがそれだけ大切だからだ・・・。
なのに僕ときたら。

「僕、貴方にちょっとしたことを頼みたいんですが」
何気ない風に、三好さんが言った。
「なんですか?」
「僕、阿片が欲しいんです」
「え?」
「あれがないととても眠れないんです。お願いです、どうか、僕のために阿片を手に入れてください」
三好さんは僕にしがみついてきた。

阿片。
それから護るために、僕は雇われたのではなかったか。

「だめです。できませんよ」
僕が言うと、
「僕とのこと、結城さんにばらされてもいいんですか?」
三好さんは、ひどく冷酷な顔つきでそういった。






inserted by FC2 system