「おいっ、猫と一緒に寝る気か!?」

田崎は猫をベッドに持ち込み、添い寝してやっている。
さすがにそれはないだろう。
俺が憤慨していると、

「構わないだろう?甘利は床で寝てくれ。なんなら、自分の部屋に帰ってもいいよ」
冷静、いや冷血な田崎は言った。

「オマエな・・・なんか怒ってるのか?」
怒っている理由が見当つかずに、俺はうろたえる。
「怒ってなんかないよ。それとも、怒らせるようなことしたの?浮気とか?」
「ばっ・・・馬鹿言え・・・浮気なんて・・・」

今日は久々に忙しくて、中には抱きついてくる女の客とかもいたが、それが原因ではないだろうな・・・。
ホストという仕事柄、服に口紅がつくのくらいは勘弁して欲しい。
それは田崎だって同じことだ。
「俺は猫と一緒でもいいよ・・・」
譲歩して、猫に寄り添う田崎の横に横たわった。
「変なことするなよ」
田崎がすかさず釘を刺す。
「しないよ・・・大人しく・・・寝るよ」
不本意ながらそういった。

「クロスケが眠った」
田崎が言った。
「へぇ?」
起き上がってみると、クロスケは目を閉じて、じっと動かない。
「寝顔も三好みたいだな・・・」
田崎が呟くのを聞いて、俺はかっとなった。
「三好三好って、お前、三好に添い寝してやってるっていうのかよ」
「寝顔が似てるって言っただけだろ?なに怒ってるんだよ」
「なんかむかつくんだよ!三好の顔した猫なんて!」
「大声をだすなよ。クロスケが起きる」
田崎がしっと人差し指を立てた。
「・・・猫なんか拾うんじゃなかったよ」
「そんなにセックスがしたい?それしかないの?」
冷笑じみた田崎の問いに、俺は憮然とした。
「セックスがしたい。それしかないよ、俺には」
「まるで発情期の猫だね」
冷たく言い放ち、田崎は背中を向けた。
その背中を、俺は背後から抱きしめた。甘いコロンの匂い・・・。
「発情期なんだ・・・お前といるときは」
「馬鹿」
田崎がわずかに身じろぎした。俺は手を滑らせて、田崎の欲望を握りこんだ。

「お前も、だろ?」







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