「どういうことだ?」

俺が尋ねると、実井は目でテーブルを指して、
「とりあえず座りましょう」
と言った。三好は気を利かせて、店を出て行った。

コーヒーが運ばれてきた。
「わぴこは、集金人なんですよ。子供レンタルの」
声を潜めて、実井が言った。

子供レンタル。そう、真島が死んだ今でも、俺たちはみのるを子供レンタルしているのだ。
「集金人?みのるのことは・・・」
「勿論知りませんよ。わぴこは一度飛んで、組織に捕まったんでしょうね。いまはいいように使われていますよ。一度はまり込んだら抜け出せない世界ですから。たぶん・・・風俗にいるんだと思いますよ。肌が随分荒れていますからね」
声を潜めたまま、実井は言った。
わぴこはもともとメイドカフェのメイドだった。
だが、そこは入り口だ。風俗という、蟻地獄の・・・巨大な巣の。

「落ちていけば際限ありませんよ」
「じゃあ、レンタル料を払ってただけなのか?」
「そうですよ。他になにがあるっていうんです?まさか、援助交際を疑っているんですか?」
ぎく。
確かに一瞬それは考えた。
「浮気」
実井が大声を出したので、俺は一瞬びくりとした。
「・・・なんてしませんよ。誰かさんとは違ってね。三好さん、でしたっけ?随分綺麗なひとですねえ・・・迫力さえあって」
「覚えていないのか?」
「前世なんてね。波多野さんくらいなものですよ、くっきりと思い出せたのは。ま、寝てみれば違うんでしょうが・・・」
なん・・・だと?
「値踏みするように僕を見てましたからね、すぐにぴんときましたよ。夕べ遅かったのは・・・三好さんと一緒にいたんでしょう?」
ちがう、と否定すべきだったが、できなかった。
俺は確かに三好と寝たんだ。
「波多野さん、そこは否定するところですよ・・・」
諦めたような、実井の言葉・・・。そして深い吐息。
「まあ僕もみのるにかまけて、波多野さんのことはおざなりだったから・・・おあいことしましょうか。今日は何が食べたいですか?波多野さん」

思いがけず優しい実井の言葉に、胸が痛んだ。

















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